小櫃川通信 vol85-③ 2005年9月11日発行
いすみの水はどこから?
山之内 志津子(いすみ市在住)
私は、2025年3月にみずっこ楽習会でのお話を聞いて、自分が住んでいるいすみ市から1時間ほどの距離で観光にも行ったことがある場所なのに、巨大な産業廃棄物処分場があることを知らなかったことにショックを受けました。
そして、小櫃川流域内に住んでいる人たち、遠くは千葉市の一部の地域までの人たちは、このことを知っているのだろうか、と疑問に思いました。自分たちの飲み水の元になっている山や川、水のことを知らなければ、このような話を聞いても遠い話、他人事なのではないかなと。まずは知るって大事!だと思いました。と同時に、「いすみ市に住んでいる私が普段使っている水道水はどこから来ているのだろう?」という疑問が湧きました。
そこで今回、いすみ市のお水について調べてみました。いすみ市の蛇口を捻ると出てくるお水はどこから来ているか、知っていますか。

いすみ市の生活用水は、2つの川が届けてくれています。
ひとつは利根川、もうひとつは夷隅川です。この6月に行政に確認したところ、現在は利根川からのお水が50%、夷隅川からのお水が50%の割合で届けられているようです。

利根川は、群馬県の山奥にある大水上山の一滴から始まっています。冬に積もった雪が山などにしみ込み、少しずつ流れ出てきて川となります。大水上山には「利根川源流の碑」が建てられています。

こちらは、利根川の水系を表しています。青く塗りつぶされたように見えますが、実は1本1本の線が重なってこのように見えています。大水上山から始まる利根川は、途中で片品川、吾妻川などの大小さまざまな川を集めて大きな流れになっています。

利根川の長さは322㎞にもなり、日本で2番目に長い川です。茨城県神栖市と千葉県銚子市の境で太平洋に注いでいます。利根川の流れている地域に住んでいる人口は、平成22年と古い資料しか見つけられなかったのですが、日本の人口の1/10に当たる約1,309万人もの人が生活していて、この数字からも、利根川は多くの人に命の水を与え続けてくれているのがわかります。また、流域面積(利根川に水が集まってくる範囲の広さ)は、1万6.840平方㎞と日本一で、面積でみると埼玉県の約4倍にもなります。

利根川のお水は、千葉県香取市の佐原から取り入れられています。その後、両総第一揚水機場、横芝揚水機場、大網揚水機場と南下し、長柄ダムに入ります。そこから、長柄揚水機場、導水制御工を通って大多喜浄水場までたどり着きます。ここまでの水の旅は約100㎞にもなります。

また、距離だけでなく、道のりも過酷です。というのも、水は普通高い所から低い所に流れます。しかし、利根川の水を取り入れている香取市佐原より南房総地域の方が位置が高いため、水は自然には流れて来てくれません。
そこで、4か所でポンプを使って水をくみ上げて運んでいるのです。まず、利根川から取り入れられたお水は、両総第一揚水機場で23ⅿポンプアップされます。揚水機場とは、ポンプを使用して水を低い場所から高い場所へ送る(ポンプアップする)ための施設のことを言います。
次に、横芝揚水機場で45ⅿポンプアップ、途中で一部のお水は東金ダムに入ります。いすみへのお水は大網揚水機場で70mポンプアップされ長柄ダムに入ります。その一部は、袖ヶ浦浄水場や長柄浄水場へと運ばれ、茂原市や睦沢町、長生村に供給されています。いすみへのお水は、長柄揚水機場で84mポンプアップされてから導水制御工に運ばれます。導水制御工とは、取り入れられたお水を安全に浄水場に送るために水の量を調整している施設や技術のことを言うそうです。そして、お水は大多喜浄水場に送られます。

大多喜浄水場にやってきたお水は、ゴミや土を取り除いたり、消毒をしたりする処理が行われて、私たちが使っている水道水となります。そして、送水ポンプ棟からいすみ市へと送られて来ます。

大多喜浄水場で水道水となったお水は、夷隅方面行きと安房方面行きの2つの道に分かれます。夷隅方面行きは、大多喜町、いすみ市、御宿町の配水池に送水管を通って送られます。安房方面行きは、勝浦市、鴨川市、南房総市、館山市等へ送られます。
いすみ市まで旅してきたお水は、新田にある大原配水場、下布施にある大寺配水場、須賀谷にある須賀谷配水池、鴨根にある音羽浄水場内にある第二配水池の計4か所にたどり着きます。その後、追加で塩素を注入して水道管を通って私たちの元に送られて来ています
ここまでが、利根川からいすみまでのお水の旅でした。
つぎに、夷隅川からのお水の旅について。
夷隅川は、勝浦市上大沢の山から生まれます。
標高140mほどの山で、太平洋までわずか約400mの所に位置しています。ここに降る雨は、すぐ下にある太平洋に全て流れるわけではなく、房総半島の隆起によって生まれた地形によって、内陸側にも流れることで長いお水の旅となります。今回、知人の紹介で千葉県の地理に詳しく本も出版されていて、高校の地理の教員でもある方に夷隅川源流を案内していただきました。この写真の上大沢の山付近から道路が走っており、そこもドライブしました。ちょうど川に沿って道路がつくられている感じでした。
また、航空写真でもお気づきかと思いますが、近くの山を切り開いてメガソーラーがあるのがわかるかと思います。ドライブの道のりでも、川のすぐ傍の田圃跡地にソーラーパネルが並んでいる箇所が何か所もあり、以前はこんなになかったとのお話も聞かれました。源流周辺の環境についても、私たち市民が意識していきたいと改めて感じました。


この写真は、夷隅川の源流となる頂上の様子です。海まで400mという距離なだけあって、真下は海!という感じで太平洋が一望できました。
また、山という感じは全くなく、周りは駐車場や民家があるという状況でした。
上の写真の駐車場のすぐ脇に、下の写真のような道があり、両側には民家があります。その先の民家の庭沿いを進むのですが、車も通れずここは人の敷地では?と思うような細い道でした。そこを抜けると田圃の跡地があり、ここが源流地点となります。


その奥には森があり、その中も案内していただくと、少し開けた空間となっており、ここに降った雨もすぐ下の田圃跡地に流れていくとのお話でした。
田圃跡地は、今は雑草が生い茂っており、いわゆる耕作放棄地と言われる状況です。そのすぐ脇には、用水路とマンホールが残っていて、用水路に雨水が流れ、青い矢印の方は内陸へ、黄色い矢印の方は海へ流れています。この内陸への水の流れが夷隅川の源流となっています。想像していた源流の様子とは全く違ったので驚きました。夷隅川はとても珍しい源流をもっている川なのだそうです。

田圃跡地の用水路から始まる夷隅川は、古新田川、西畑川、大野川、落合川、江場土川などの様々な川が合わさり、いすみ市江場土で太平洋に注いでいます。
激しく曲がりくねって流れているのが特徴で、これは、高低差が少ない地域を流れるため、流れが穏やかであること、海が隆起したため軟らかい土地であるため曲がり易かった等が考えられているようです。
川の長さは67.5㎞で、夷隅川の流れる地域は、勝浦市、大多喜町、御宿町、いすみ市の4市町村にもなります。流域面積(夷隅川に水が集まってくる範囲の面積)は、299.4平方㎞で千葉県最大となります。

左の図は夷隅川の水系を表しています。青い線が川の流れです。このうち、私たちの生活用水として取り入れている川は、大野川、山田川、海老川になります。
そのうちの大野川は、その川の一部を堰きとめ、ある程度水が溜まったら大野浄水場へ取り入れられています。山田川は、東ダムと東第二ダムに流れ込み、山田浄水場へ取り入れられています。海老川は、岬ダムに流れ込み、音羽浄水場へ取り入れられています。各浄水場でお水が綺麗にされ、私たちが生活で使っている水道水となります。

大野浄水場からは、その裏山にある大野配水池に送られます(①)。
山田浄水場からは、大原台にある小池配水池(②)と大多喜浄水場からのお水と共に下布施にある大寺配水場(③)に送られます。
音羽浄水場からは大多喜浄水場のお水と共に浄水場内にある音羽第2配水池(④)へ送られます。
その他に、大多喜浄水場から須賀谷にある須賀谷配水池(⑤)、新田にある大原配水場(⑥)にも送られています。そして、水道管を通って私たちの元に来ます。
ここまでが、夷隅川からのお水の旅のお話でした。
「わたし」が生きていくうえで無くてはならない「わたしのお水」について知ることで、ちょっとでもお水のことを気にするようになったり、お水をお裾分けしてくれている「わたしの川」、そして、そのお水を生み出してくれている「わたしの山」のことを知ることで、ちょっとでも身近なこととして気にかけられるようになったら良いぁとの想いからお話させていただきました。
「わたしの山」や「わたしの川」に、私たち一人一人が「ありがとう」の気持ちと、
「これからもよろしくね」の気持ちで、お水や山や川と関わっていけると良いと思っています。
