小櫃川通信 vol.81−①(2023年11月7日発行)
千葉地裁「行政訴訟 証人尋問」実施される

去る令和5年10月3日、第71回行政訴訟裁判(千葉県に対する産業廃棄物最終処分場の許可取り消しを求める裁判)の法廷において、口頭弁論と原告側の証人尋問がありました。
原告証人尋問では、原告としては処分場に最も近くにお住まいで、椎茸栽培を専業としている田村源三郎さん、久留里で400年も続く酒造業を営む吉崎酒造社長の吉崎明夫さん、久留里の名水に憧れて50年前に久留里の移り住み、現在「水めぐりボランティアガイドの会」副会長の末原正彦さんが証言台に立ちました。
傍聴席は満席。お三方の証言内容は簡潔明瞭で傍聴人から感動的の感想も寄せられました。本誌の冒頭の論稿(第一期処分場廃棄物撤去裁判提訴について)を寄せてくださった野々山 登さんがメモとして寄稿してくださいましたのでここに掲載いたします。なお、質問者は原告側の弁護士の方々により行われ、県側の弁護人からは質問はありませんでした。
田村源三郎さん
Q.職業・現在の住所に何時から住んでいるのか(市原市大久保)
・職業は造林業(杉、檜)、農業(水田・畑)、椎茸栽培を行っている。現在は収入のほとんどを椎茸栽培で稼いでいる。
・本件処分場より約2km離れた自宅に、高校・大学時代を除き約73年間住んでいる。
Q.地下水の利用について
・水道が自宅には通っていないため、飲料用、炊事、風呂など生活に使用する水はすべて周辺の山から滲み出している水を水源とした自宅にある井戸からくみ上げた水を使用している。この井戸は約100年前から使用している。
・自宅の近く(約50m)に椎茸栽培用の水を確保するために深さ約100mの井戸(約60mからポンプアッブ)を30~40年前に設置して使用している。
・椎茸栽培は原木栽培であり、ビニールハウス及び露地栽培を行っており、原木への定期的なスプリンクラーによる散水等に井戸水を使用している。椎茸栽培には地下水が必須となっている。ビニールハウス及び露地栽培を行っているのは安定した収入を得るためです。
・収穫した椎茸は直売場及びスーパーに出荷している。
Q. 水田、畑での農業について
・自宅から約500m離れた水田では、梅が瀬川の水を引き込み稲作を行っている。
・畑では主に自給用の野菜を栽培している。
Q.周辺の住民の水道水源について
・自宅の近くに約500戸の集落があり、地下水と浄水場で浄化した河川水とを混ぜた水道水を使用している。
Q.処分場が出来たことにより迷惑したことはありますか
・平成28年頃から、ゴミ焼却場のような生ごみの腐敗した独特の耐え難い悪臭の被害があった。この件に関しては、知事あてに改善を求める意見書を出した。
・悪臭は数年間続き生活に支障をきたすほどの苦痛があった。
Q.処分場に関して心配していることは
・廃棄物処分場から汚染水が漏洩したら井戸水を汚染して飲み水に影響が出ると聞いている。
・飲み水及び椎茸栽培用の地下水が汚染されれば、ここでの生活が成り立たない。
Q.自然保護指導員としての意見は
・近くに自然公園もあることから、自然保護指導員として地域の動植物の保護活動を行っている。
・ミツバツツジなどの地元に特有で希少な植物、野鳥等貴重な自然が残っており、遠くから来られる観光客のためにも自然を保護していきたいと考えている。
Q.処分場の第Ⅲ期増設についてどのように考えているか。
・第Ⅲ期増設には反対している。現状のほぼ倍の規模となる処分場を新たに建設していることに関しては、新井総合施設㈱に対する怒り及びおおきな不安を感じている。
・本件処分場に接して林道(幅4m)があり、東側は市原市で自然を保護する施策により処分場の建設はできないが、西側の君津市側には林道に接するように巨大な廃棄物処分場があり自然が破壊されているのは到底納得できない。
・貴重な自然に囲まれて73年間暮らしてきた。これからも自然とともに現在の自宅で過ごしたいと考えている。
Q.【裁判官より】自宅の井戸水は家族の他、使用する人はいますか
・自宅にある2つの井戸(生活水用井戸、椎茸栽培用井戸)は家族が使用するのみです。
・最後に裁判官にお伝えしたいのは、第Ⅲ期処分場の増設工事が始まったが、私としては全く納得がいかない。動植物への影響は明確には分からないが、近隣住民の生活及び自然を大切にする判断を行って頂きたい
吉崎明夫さん
Q. 職業・現在の住所に何時から住んでいるのか(君津市久留里)
・久留里地区で酒造業(日本酒及び焼酎)を営んでいる。
・久留里で生まれ、大学及び酒造りの勉強で一時離れていたが、それ以外は久留里に住んでいる。
Q. 吉崎酒造の歴史等について
・吉崎酒造は江戸初期から始まっているので約400年の歴史がある。久留里小櫃地区では最も古くから続いている酒蔵です。
・久留里地区には「平成の名水百選」に選定された名水(自噴井戸群)があり、きれいな水を活用した酒蔵が5軒あります。
Q. 地下水の利用について
・敷地内に3本の井戸があり、2本は明治時代と大正時代に掘った上総掘りの自噴井戸であり、1本は比較的浅い井戸です。
・井戸水は生活用水としてもトイレの洗浄等に使用している。
・酒造りにはきれいでミネラル分が適度な久留里の地下水が欠かせない。ビンの洗浄などにも地下水を使用している。水道水は塩分等を多く含んでいるため使用できない。
・米1tに対して1.4tの地下水を使用する。4回に分けて、蒸した米と水を加えて2,200リットルの原酒ができる。またビンの洗浄などにも地下水を使用している。
・水道水は地下水と浄化した河川水が混合しており、給湯器等に使用している。
・名水と言われるきれいな地下水は酒造りに必須であり、酒の味にも影響するため地下水が汚染されれば酒造りが継続できないと考えている。
Q. 酒の販売におけるPR等について
・自社製品は地元の酒類の卸売業者を経由して主に県内の酒店で販売している。ネット販売及び事務所兼店舗でも販売している。
・自社製品のPRは、
①400年の歴史を有する酒蔵であること
②久留里の名水を酒造りに使用していることが中心となっている。
Q. 自社製品などがマスコミに取り上げられたことがありますか
・「名水の町に銘酒あり」との趣旨で、NHK、日テレなどの民放、BS等で度々取り上げられ、テレビを見て来客する方もたくさんいます。
Q. 原告になった理由を聞かせてください
・久留里の名水として知られるきれいな地下水が無ければ酒造りが成り立たないため、地下水の汚染を防ぎたいとの思いから原告に参加した。
・君津市及び地元は久留里地区を「名水の町」としてPRしており、駅前に「酒ミュージアム」を作り、「名水サミットinきみつ」を開催するなど町の活性化を進めている。第Ⅲ期処分場を建設することにより地元の歴史のある名水が汚染されることとなれば大変な迷惑である。
Q.第Ⅲ期処分場の増設許可に対してどのように考えていますか
・第Ⅰ期処分場は漏水事故後も、10年以上改善されることなく放置されている。汚染水が混入した地下水が何年後に久留里地区に到達するのかと心配している。これ以上の事故は起きないように対策を十分行うことを望んでいる。
・本件処分場の大規模な増設(第Ⅲ期処分場)は、人の生活を取るか経済を取るかの問題と考えている。(人を犠牲にしないで経済を発展する方法を模索すべきであると考えている)
・久留里にて酒造を生業にしているため、久留里の名水の水源地にこのような巨大な廃棄物処分場があり、第Ⅰ期処分場の漏洩事故の改善をすることなく放置されているのにかかわらず、増設した埋立地に今も大量の有害物を含む廃棄物が搬入されていることが、SNS等により拡散され風評被害が発生すれば久留里地区の酒造業者は大きな打撃を受けることとなる。この点を最も心配している。
末原正彦さん
Q. 職業・現在の住所に何時から住んでいるのか(君津市久留里)
・ほぼ50年前に久留里に移住した。
・久留里の最大の魅力は名水の里であり、近くに自噴井戸が多数ありいつでも利用できることです。これが久留里への移住のきっかけとなった。
Q. 地下水の利用について
・自宅には水道があり、生活水として炊事、風呂、洗濯等は水道水を使用しているが、コーヒー及びお茶などは味を楽しむために自噴井戸の地下水を使用している。
・2019年の台風による1週間ほど続いた断水時は近くの井戸水を飲料用等生活用水として使用していた。久留里地区の多くの方々が断水時、自噴井戸の水を使用しており、災害時の生活水確保に大変貢献していた。
Q. 上総掘りの保存活動等について
・NPO法人を立ち上げて、上総掘りの保存のために借りた田んぼに設置した上総掘りの井戸で体験してもらうなどの活動を行っていた。
・ボランティアガイドとして、久留里城・自噴井戸群・多くのお寺等に観光客を案内して久留里の魅力を説明している。昨年は新型コロナの影響で観光客が少なくガイドを行ったのは600人程度でしたが、通常は昨年の数倍の方々が訪れている。
Q. 本件処分場に対する思いをお聞かせください
・本件処分場については第Ⅰ期処分場の計画・建設が始まったころに知ったが、最初に”なぜこんな所に廃棄物処分場を造るのか”との思いであった。これをきっかけに、「御腹川と久留里地区の水を守る会」で環境保全活動を行うようになった。
・本件処分場の建設にあたって、事業者や県担当者から安全で汚染水の漏洩は無いとの説明がなされていたが、平成24年の漏洩事故等トラブルが度々起こり、心配していたものが現実となってしまったと感じている。
・そして、第Ⅰ期処分場は現在も、溜まり続けている水を機械で抜いている。この機械の水抜きを止めることは出来ない。止めれば、産廃の山は溜まる水の力によって、内から崩れることになる。従って、この第Ⅰ期処分場の漏洩事故を解決しない限り、機械による水抜きは永遠に続けなければならない。何故、この重要な案件をその場しのぎの対処法でそのまま続け、第Ⅱ期、第Ⅲ期と許可を出したのか理解に苦しむ。第Ⅰ期処分場の完全解決が何よりも先決問題である。
・埋め立てられた廃棄物が崩壊すれば、井戸水や、河川水が汚染され小櫃川の水を水源としている君津地区の水道水が汚染されるため壊滅的な被害が発生する。
Q. 【裁判官より】房総半島の地層は水を通す砂質層が山から傾斜して久留里地区に達し、この水が上総掘り井戸で自噴しているのですか
・久留里地区の地下水は、本件処分場のある小高い山の方につながっている地層の砂質層を通って流れている。
・廃棄物処分場から汚染水が漏れれば久留里の地下水及び水道水は汚染されることになると考えている。
Q. 【裁判官より】隣家の井戸水は飲み水として使用しているのですか
・隣の家の井戸水は保健所による飲料水として適合しているか判断するための水質検査が行われていないため、現在は飲料用には使用していない。飲料用の水は久留里駅前の水くみ広場の自噴井戸の水を使用している。
