小櫃川通信 vol86-②
不当な千葉地裁民事訴訟判決に抗議する
小櫃川の水を守る会 代表 鳥海文和
不当な判決に対し東京高裁に控訴を準備
令和5年5月、私達は新井総合施設(株)君津環境整備センターに対し、「第Ⅰ期処分場の廃棄物の掘り起こしを求める」民事訴訟を提起しました。これに対し本年3月8日「原告らの請求をいずれも棄却する」との判決が下されました。
今回の千葉地裁の判決は、被告の主張をほぼ丸呑みしたものであり、原告による事実に基づいた主張を一顧だにしないその不当性に、憤りをもって抗議するものです。
本処分場が位置するのは、君津地区だけでも30万人以上が利用する上水道の水源地であり、また久留里地区の歴史的遺産としての価値を持つ自噴井戸群の水源地でもあります。そこに多種の有害物質を含む汚染水が現に漏洩していること、しかも止めどなく拡張の一途を辿っている状況を鑑みると、漏洩し続ける処分場を放置することは一刻の猶予も許されません。一たび事故が起きれば地域全域に壊滅的な惨劇が生じること必至であり一歩も引けないたたかいとなっています。私たち原告は、東京高等裁判所への控訴手続きを進めているところです。
何を争点にしてきたか
本裁判への請求の概要は、第Ⅰ期処分場で平成24年1月に保有水の漏洩事故が発生し、十数年経ても改善どころか原因究明さえも進まない状況があり、放っておくと身体や生命に重大な影響をもたらす危険があるため、埋設された産業廃棄物(有毒物質)の撤去を求めるというものです。裁判の争点の中心は、第Ⅰ期処分場から漏洩した保有水が本件処分場外へ漏出しているか否かに絞られてきました。
しかしその争点を論ずる前に、そもそも危険物質が大量に集積される管理型最終処分場で漏洩しているという重大な事実が明らかになっただけで、既に稼働する資格がない処分場であることを指摘しなければなりません。被告は「漏洩はしているが漏出はしていない」(保有水が処理場内に漏洩している事実は認めるが処理場外には漏出していない)などと主張を展開していますが、元々論ずるに値しない論理であるといわなければなりません。
土堰堤法尻からの漏洩について
原告は、保有水が処理場外に漏出している前提として、2つの漏洩ルートを主張しました。1つは、①土堰堤法尻からの漏洩、もう1つは、②埋立地底面及び埋立地法面の遮水工からの漏洩です。
- 土堰堤法尻からの漏洩。
処分場の内部に不透水層ができて、本来底面より0.5m以内であるべき保有水水位が標高200m以上(水深40m以上)まで満たされてしまいました。これにより想定をはるかに超える水圧が土堰堤にかかり、さらに土堰堤の底部に遮水工を敷設せず、遮水機能が著しく不完全であることから、保有水はなんと22㎥/日も漏洩していることが明らかになりました。被告は、大量に漏洩した保有水を場外に出さない対策として遮水シートを折り返し、内部に簡易な集水管(ヘチマロン)を入れ、浸出水処理施設に送水するとしています。しかし22㎥/日もの大量の保有水をすべて回収することなど全く不可能であると言わなければなりません。当然ながら外部に設置したモニタリング井戸からは高濃度の塩化物イオンが採取されています。
これに対して判決理由には納得することができません。判決文の要旨は以下のように下されました。漏れ出た浸出水が集水ピットに送水されていない状況が続いているとすれば、観測井戸で測定される塩化物イオン濃度が上昇、下降を繰り返すことはなく、経時的に上昇し高濃度で安定するはずである、と。
つまりイオン濃度が乱高下(高濃度の時と低濃度の時がある)していることは、土堰堤から漏洩した浸出水が集水ピットに送水されていない状態が続いている事実と整合するものではないと断定しています。しかしイオン塩化物濃度の乱高下があるから、浸出水集水ピットに100%送水されているという証拠になるだろうか。地下に漏洩していれば経時的に高濃度で安定するはずであるという論立てはおよそ荒唐無稽な論理だと言うしかありません。
さらに被告側の研究者の意見書で14年前の事故時に大量の保有水が今も残存しており、それが溶け出てくるという主張を未だに展開しています。これまた荒唐無稽な論理であると言わざるを得ません。そう主張するのであれば、現に高濃度の保有水が漏洩している事実(乱高下の事実も)があるのだから、いつどこからどのようにして出現するのか、被告側にこそ立証責任があるのではないかと言わなければなりません。
- 埋立地底面、法面からの漏洩について
埋立地底面及び埋立地法面の遮水工からの漏洩については、平成24年度の漏洩事故発覚後保有水水位が著しく高いことが判明し、被告は揚水井戸や新たな集排水管の設置等、対策を講じましたが最初の一時期を除いて、ずっと満水状態が継続しています。今も全く改善していません。
揚水機をフル回転させて保有水を揚水しても、最初のほんの一時期水位が下がったことはあっても、14年前から保有水は水深40mをずっと保ってきました。これは明らかに埋立地底面や埋立地法面からの地下水の流入を示しており、遮水工が破損している何よりの証拠です。
判決では、「水位が低下しないのは、埋立地内の廃棄物が固結していることが原因……また、埋立地を被覆している防水シートの隙間から雨水が流入していることも考えられる」と判断しています。しかしあれだけ完全に覆ったシートの隙間から揚水機で揚水する量と同等かそれ以上の雨水が入ることなど考えられません。ましてや降雨は一時期なのに揚水は継続しているのですから、継続して水深40mを保っている事実は、雨水が入り込むことが満水の主因であるという主張など入り込む余地はありません。
また遮水工が破損している根拠としてもう一つ明らかなのは、平成24年の保有水漏洩事故により、第Ⅰ期処分場への搬入の停止と改善の求める処分を受けたのは、当時処分場の地下水集水ピットから有機フッ素化合物(PFOA)が高い濃度(濃度510ng)で検出されたことによるものであり、塩化物イオン濃度も第Ⅱ期処分場の地下水集水ピットのそれよりも一桁ないし数倍高い値で現在推移している事実でした。極めて重大な事実であり、原告は繰り返し継続的に有機フッ素化合物(PFOA)の存在を検査するよう求めてきましたが、この14年間有機フッ素化合物を特定して検査していません。有機フッ素化合物の漏洩をもって搬入停止命令をしたのだから継続的に検査することは必須なことであるにもかかわらず、してこなかったのが現実です。
しかるに判決(p29)では以下のように記されています。「一般財団法人千葉県環境財団が令和5年2月に行った水質検査を含め、その後の有機フッ素化合物が検出された形跡はない」と。これは明らかに判決の事実誤認であって、千葉県議会でも平成24年の漏洩の発覚以降一度も調べていないことを証言してきたのです。この誤認は許されることではありません。高等裁判所ではこの誤認についても十分な審理を願いたいと思います。
小櫃川の水を守る会は最後までたたかいます
私たち原告は本判決には同意できず、既に東京高等裁判所への控訴の準備に入っています。今回の民事裁判は証拠になるほとんどの資料を新井総合施設(株)が握っており公開されない中、一つひとつの事実を元にして、研究者の力をお借りして、また弁護団の日夜を分かたぬ努力の中で切り開いてきたものです。裁判の過程では、危険な有害物質が漏洩している事実が明白なのだから、被告こそその主張に数々の立証責任が存在するはずなのに、不問にされてきたものがたくさんあることも私たちは納得することができません。
今後一歩も引けない裁判に勝訴するためには、多くの住民の理解と賛同が不可欠です。貴重な環境を保全して、安全な水源地を未来に残していくために力を結集していきましょう。弁護団、原告、会員の皆さんとともに小櫃川の水を守る会は、高裁での裁判を意気高くたたかっていく決意です。
