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鴨川メガソーラーはいま

小櫃川通信 vol.86-③

目次

鴨川メガソーラー計画はいま

鴨川の山と川と海を守る会事務局 川口訓平

事業地の東側、旧鴨川有料道路側から空撮。伐採地が住宅地や畑に迫っている。
 

鴨川のメガソーラー計画につきましては、昨年9月の貴総会で概要をお話しさせていただきました。

(事業概要)

250haの急峻な山地を造成して47万枚の太陽光パネルを設置、100MWの太陽光発電施設を建設

(経緯)

2014年 A-スタイル社がFIT設備認定(36円/kwh×20年)を取得、

2017年 「AS鴨川ソーラーパワー合同会社」を設立、

2019年 林地開発行為許可を受けたが、事業者の内紛で未着工のまま4年間休止。

2023年 事業譲渡によって変更された新たな代表者が、

2024年末に「再開届」「工事施工者の変更届」「資金計画書」等を提出。2025年5月着工。

事業地の西側か空撮。北から続く尾根が大きく分岐する地点。
伐採木が切土された土砂と一緒に谷下へ放置されている

今、現地は主な尾根筋と両側の斜面が伐採され、丸裸の山肌に根株や倒木が放置された状態です。

盛土規制法による審査や違法伐採があり、さらにFIT事業認定の失効が重なった結果、土砂の流出防止柵の設置や伐採木の片付けなど防災作業以外の工事は一時中止されています。

9年前、事業計画の安全性に疑問を持った市民有志は、情報を収集して問題点をまとめ、鴨川市や千葉県・国に説明を求め、多くの市民に伝えてきました。国・県・による適切な指導と、許認可や市の同意等の見直しや取り消しを求めて、署名集め・陳情・請願・行政不服審査請求・行政訴訟を重ねてきました。

太陽光発電所の建設に伴う土砂災害や環境の悪化などが全国で問題になって、太陽光発電施設が環境影響評価制度の対象に追加され、3次に亘る林地開発許可審査基準の厳正化、再エネ特措法の改訂、盛土規制法の施行等がありましたが、それらの関連法令の改善・整備は、鴨川のメガソーラー計画の林地開発が許可された後だったので、いずれも法の遡及適用禁止の原則に阻まれて適用されず、2026年3月現在も実効性に欠ける『行政指導』に止まっています。この背景には、県が下した林地開発許可に大きな問題があります。

許可審査基準の基本には、開発行為の実施の確実性の要件として「開発行為に関する計画の内容が具体的であり、許可を受けた後遅滞なく申請に係る開発行為を行うものと認められること。」と明記されています。しかし許可後、休止届を10回更新して6年後に着工した事実は、許可審査が申請内容を基準に照らして整合性をチェックするだけで、実地での検証や申請内容の裏付けを確認することなく形式的に行われたことを露呈しています。また62回に及ぶ『行政指導』が実効性を持たない実態は、許可後に関係法令が制定された背景にある社会的・科学的なデータなどの根拠を重く受け止めない県の行政姿勢を表しています。

昨年9月後半以降の状況についてご報告

5月以降、事業地中央部の尾根を伐採して何台もの重機が行き来し、剥き出しになった山肌が遠望されていましたが、どういう工事か説明もないので市民に不安が広がっていました。9月23日、有志の方が地主さんの了解を得てドローンで現地の生々しい空撮画像をとらえてくれました。早速SNSのXに投稿したところ、北海道釧路湿地の乱開発を問題視していたアルピニストの野口さんの発信とも呼応して、マスコミの取材が相次ぎ、政府でも関係省庁間連絡会議が発足するなど、鴨川のメガソーラー計画は一気に全国的な認知度を高めました。

一方では、8月~9月にかけて市内の2団体が関係省庁の担当責任者たちと3回に亘って面談し、鴨川の問題の理解と国の有効な対応を強く求めた成果の一つが、盛土規制法第52条「主務大臣は、都道府県への必要な助言・情報提供など援助する」に基づいた千葉県への対応となり、県の新たな動きが始動しました。

3月に、6番目の新たな市民グループの活動が「有志の会」として始まり、10月には「鴨川自然と結の会」に発展、10月4日「市民主催、メガソーラー計画説明会」は約600余名が参加する大集会、10月30日「第2弾、メガソーラー説明会(Ⅰ)」約130名、11月2日「第2弾、メガソーラー説明会(Ⅱ)」約120名参加となり、関心と「メガソーラー計画を止めよう」の空気が一層高まっていきました。

10月29日、千葉県知事宛ての要請書「鴨川市のメガソーラー計画を、ただちにストップさせて、開発計画全体の見直しを命じてください」を当会など6団体連名で提出、県庁内で記者会見を開きマスコミでもさらに広く取り上げられるところとなりました。

10月24日、千葉県知事・鴨川市長連名で国の関連省庁宛て要望書「大規模太陽光発電事業に関する要望について」を担当部長級に提出しました。同日、盛土規制法第25条「報告徴取」に基づき盛土の変更計画に係る具体的な文書報告の提出と、県が内容を確認するまでの間の工事の中止を事業者に求めました。

 10月28日、2箇所で合計1.5haの残置森林を伐採していたことが確認され、森林法違反、許可条件違反とし、原因の究明と森林の復旧を命じました。

11月5日、知事と鴨川市長がヘリコプターで現地を空から視察。

11月13日、「鴨川市内における大規模太陽光発電施設計画に関する有識者会議」の設置を発表、第1回を18日に開催。

11月14日、盛土計画の報告書の提出を受けて、盛土規制法が求める高度な技術的基準を満たすための審査体制を立てることと併行して、事業者にはあらためて新たな工事を行わないように命じました。

市民有志で、11月~12月の県議会本会議や常任委員会でなどを傍聴

12月17日、新たに12箇所の残置森林合計0.9haの誤伐採の報告を受け、復旧計画書の提出を事業者に求めました。12月23日、有識者一行が現地視察、事業地の入口では市民有志100余名が出迎えのサイレントアピールを行いました。

2026年1月9日、FIT認定の失効が確認されたことを公表すると同時に、事業者に対し、今後の事業計画の継続などの意思確認とともに資金計画など林地開発行為の適正な履行が可能であるのかを判断するために必要な事項を報告するよう求めました。1月28日、「事業継続の意向」を示した事業者には具体的な事項の報告を求めているようですが、3月13日現在ではその報告が出ていないようです。

まとめにかえて

2月6日、現地視察を踏まえた2回目の有識者会議が開かれ、その議事内容が県のHPで比較的詳しく公開されています。各検討テーマに従って出された8名の委員の意見を総合すると<この場所に太陽光発電所を建設する開発計画を許可したこと自体が疑われる><県は事業者に対して厳正な指導が必要>の2点に収斂するのではないでしょうか。

3月中に、多分最終回と思われる会議が開かれるようですが、上記のような断言的な諮問は出ないでしょうが、今後の計画も提示せず復旧作業の行政指導にも従わない事業者に対して、県が敢然と向き合い、森林法に基づく中止命令などの行政処分に踏み切ることが求められています。

事業計画地の植生は、尾根にモミやミツバツツジ、斜面地から谷は、スギの植林地とともに典型的なシイ・カシ類から成る照葉樹林が優占し、渓谷はナツエビネやアケボノシュンランなどのラン類やシダ植物等草本の貴重種が多く生育していると言われています。標高差が200m以上ある入り組んだ渓谷地は加茂川の重要な水源域であり、その点で小櫃川同様の水環境にあります。今後も、小櫃川の水を守る会の皆さまと連携して、南房総の豊かな自然環境を次世代に引き渡せるように、微力ながら傾注したいと思います。

西側の上空から撮影。切土された尾根筋から谷底までおよそ数十メートルの高低差がある。

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