〜プロジェクトWETと私の環境教育〜
久留里在住 古木真也

私がプロジェクトWETを初めて知ったのは、中米コスタリカでの環境教育の現場だった。
円借款によるサンホセ下水道整備プロジェクトに関わっていた頃、現地で環境教育の手法としてプロジェクトWETに出会い、実際にアクティビティを実践した
そこで感じたのは、水について説明するだけではなく、子どもたち自身が体験することで、水をより身近なものとして捉えられるということだった。
それ以来、プロジェクトWETは私の環境教育の中で大切な存在になった。
日本に帰国してからも、その経験を子どもたちとの活動に採り入れてきた。
子どもたちを対象としたキャンプなどで実践し、その後も地域でさまざまな体験型の活動を行ってきた。
最近では、地域の子どもたちが参加する「かずさっこクラブ」でワークショップを実施し、さらに8月末には、上総小学校の先生方を対象とした研修も予定している。
20年以上前に海外で出会った一つの教育手法が、今、水の街・久留里で、地域の子どもたちや先生たちとの活動につながっていることに、何か感慨深いものがある。
プロジェクトWETとは
プロジェクトWETは、米モンタナ州立大学を拠点として発展してきた、水をテーマとした国際的な環境教育プログラムである。
その特徴は、知識を一方的に教えるのではなく、ゲームや実験、体験活動を通して、子どもたち自身が水について考えることにある。また、教材は専門家だけで作って終わりではない。教育者や水の専門家が活動を考え、実際の現場で試し、意見を取り入れながら改良を重ねてきた。
現場で得られたフィードバックを繰り返し採り入れることで、アクティビティが磨かれていく。プロジェクトWETが秀逸なのは、この部分である。
その中でも現在、私が特に力を入れているのが、「驚異の旅」というアクティビティである。
「驚異の旅」では、子どもたち自身が一滴の水になる。
活動場所には、雲、氷河、海、湖、川、地下水、土壌、植物、動物という九つのステーションがある。
子どもたちは、自分が今いる場所で専用のサイコロを振り、次の行き先を決める。そして実際にその場所へ移動し、ビーズを一つ加える。
これを繰り返すと、一人一人の手元に異なるビーズの並びができる。それが、その子がたどった「自分だけの水の旅」になる。
ある子は、雲から土壌、地下水、川、海へと進むかもしれない。
別の子は、海から雲、氷河、川へと進むかもしれない。
同じ旅になるとは限らない
この違いを体験することで、水は「雨になって川を流れ、海へ行く」という一本道ではなく、さまざまな場所を行き来しながら循環していることに気付くことができる。
そして最後に、自分のビーズを見ながら友達と旅を比べたり、自分の旅を物語として語ったりする。
実践して、また改善する
プロジェクトWETの面白さは、同じアクティビティでも、実際に子どもたちを前にすると新しい発見があることだ。
どこで子どもたちが夢中になるのか。
どこで迷うのか。
どんな説明なら伝わるのか。
どんな問いかけをすると、子どもたち自身が考え始めるのか。
最近、かずさっこクラブで「驚異の旅」を実践した際にも、さまざまな気付きがあった。
そこで得た経験や参加者の反応をもとに、教材や進め方を少しずつ改善している。
プロジェクトWETの公式教材を土台にしながら、実際の現場で実践し、観察し、振り返り、また改善する。
その繰り返しによって、地域の子どもたちにとってより良い学びの場をつくっていきたいと思っている。
次は、先生たちとこれからは子どもたちだけではなく、先生方にもプロジェクトWETを体験してもらう。
上総小学校では、教員を対象とした研修を行う予定である。
先生自身が一滴の水になって旅をする。
その体験を通して、
「これを子どもたちにやったらどうなるだろう」
「どの学年なら、どこまでできるだろう」
「どんな問いかけをすれば、子どもたちの気付きにつながるだろう」
と考えてもらいたい。
私自身がそうだったように、まず体験することから始めたい。
一滴の水から
私が目指しているのは、子どもたちに水の知識をたくさん覚えてもらうことだけではない。
もちろん、水循環の仕組みや「蒸発」「浸透」といった言葉を知ることも大切である。しかし、それ以上に大切なのは、「水を自分のこととして考えられる人」を育てることだと思っている。
蛇口をひねれば水が出る。
雨が降れば川に流れる。
そんな日常を、当たり前で終わらせない。
「この水はどこから来たのだろう」
「どんな旅をしてきたのだろう」
そう考えるきっかけを、子どもたちに届けたい。
青年海外協力隊としての経験、サンホセ下水道整備プロジェクトで出会ったプロジェクトWET、日本に帰国してからの子どもキャンプなどでの実践、そして現在のかずさっこクラブでのワークショップ。
これまで積み重ねてきた経験を、今度は上総小学校の先生方との研修へとつなげていきたい。
そして、20年以上前に海外で出会ったプロジェクトWETを、今度は自分が暮らす地域で、次の世代へつないでいきたい。
一滴の水から、子どもたちの未来へ。
それが、今の私がプロジェクトWETに取り組む理由である。

